その他の自動車用潤滑油について

その他の自動車用潤滑油について

1. ギヤーオイル(Gear Oil)

トランスミッション、ディファレンシャル、トランスファーといったエンジンの力を車輪まで伝える重要な役目を担った部分に使用されるオイルのことを、一般にギヤオイルと呼んでいます。

これらのギヤ(歯車)部分では、金属同士がかみ合い歯面には大きな圧力と衝撃がかかります。

ギヤオイルは歯面に油膜や特殊な被膜をつくり、圧力や衝撃を和らげ、ギヤの磨耗と焼き付きを防ぎ、更に錆などから歯面を保護する働きをしています。

ギヤーオイルの粘度分類(SAE粘度)

ギヤーオイルのAPI規格


2. ATF(Automatic Transmission Fluid)

オートマチックトランスミッションフルード(Automatic Transmission Fluid)の略称でAT機構中に於いて使用される油剤となります。

Automatic Transmission Fluidは、直訳ではオートマチックトランスミッション液(Fluid=液)となりますが、組成上は潤滑油組成物となります。

ATFの品質については公的機関が定める評価法および規格がなく、評価法および品質規格を公開している自動車メーカーはゼネラルモーター(GM)社とフォード社であり、この2社の品質規格が世界標準として採用されています。GM社規格DEXRONFORD社規格MERCON

3. パワーステアリングフルード(Power stealing Fluid)

パワーステアリングの機能とは、油圧によってステアリング機構の動きを補助してやるものです。つまり、パワーステアリングフルードは油圧の作動油として使われているものです。

パワーステアリングの力は、オイルポンプによって作り出され、圧力は60?/?2程度となります。高圧ではありますが、温度はそれほど高くなるものではなく、同じく油圧を作動油として使うブレーキオイルのように温度特性は必要ではありませんが、安定性は要求されます。

4. ブレーキフルード(Brake Fluid)

ブレーキフルードは、ブレーキペダルの踏力を油圧機構を介しブレーキ(パットやドラム)に伝える為の油圧作動液です。

ブレーキフルードに要求される性能の中で最も重視されているのが沸点(沸騰する温度)です。

ブレーキフルードはブレーキの摩擦熱が伝わってかなりの高温になりますが、温度上昇により沸騰してしまうと、気泡が発生してブレーキが効かなくなってしまうベーパーロックという現象が発生します。それを防ぐために沸点が重視されるわけです。ブレーキフルードには鉱物系、シリコン系、グリコール系の3種類ありグリコール系が主流となっています。

鉱物系はシトロエンの一部に、シリコン系は古い英国車やハーレーダビッドソン程度にしか使われてなく、互換性はまったくないので混合すると分離や凝固と いった不具合が発生する為、注意が必要です。

現在、ブレーキフルードのグレード区分として世界的に広く使われているのが、FMVSS(アメリカ連邦自動車安全基準)が定めたDOT規格となります。

現在DOT3、DOT4、DOT5.1の3グレードが流通しており、数字が大きくほど沸点が高くなります。

DOT345/5.1
JIS3種4種
沸点205℃以上230℃以上260℃以上
ウェット沸点※140℃以上155℃以上180℃以上

※ウェット沸点とは3%の水分を含んだ状態での沸点